近藤史恵 トクマ・ノベルズ
待望の南方署強行犯シリーズの第二弾である。
新米刑事である圭司の視点で描かれる警察小説であるが、近藤氏の描く世界であるから構える必要は全くない。彼を振り回す先輩女性刑事の黒岩はクールだが冷徹ではないし、この作品では彼女のプライベートな部分も紹介されているので読者はよりいっそうの親近感を覚えるだろう。
しかし、ほのぼの系の作品かとのんきに読み進めていると、かなり衝撃的な事件に出くわすことになるので注意が必要だ。もっとも、章ごとのタイトルを見ればあらかたの予想は付くかも知れないが。
非常に勝手な感想だが、思春期に初めて新井素子氏の「通りすがりのレイディ」を読んだときに近い衝撃があった。
(以下、少々ネタバレなので文字色を白にしてあります。読みたい方はドラッグしてください)
「通りすがりのレイディ」では、人間の赤ん坊を臓器移植用に<飼って>いるシーンが登場する。怪我の治療もされないまま放置され、言葉も教えられずにいる子ども達のシーンは非常にショッキングだった。この作品に出てくるのは動物たちの受難だが、衝撃度はそれに近い。
ただ、圭司の飼い猫の太郎と、新参者のチビとの関わりの部分で読者はホッとすることだろう。このシーンが一番好きかも知れない。
私自身は、特別動物好きと言うわけではないが、この作品に描かれている一部は現実なのだし、あとがきにも感じるものがあった。ぜひ読者にもこれを読んでもう一度「動物と暮らす」ことについて考えてもらえればいいと思う。
ISBN4-19-850676-0 ¥819+税
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