森博嗣 講談社ノベルス
ショートショート5編を含む短編集。哲学的な雰囲気のものやセンチメンタルなものなど、バラエティに富んでいるが、やはり一番のお楽しみは最初に収録されている「ラジオの似合う夜」とラストに置かれた西之園萌絵と叔母の佐々木睦子が登場する「刀之津診療所の怪」だろう。
「ラジオの似合う夜」には固有名詞が一切登場しないが、Vシリーズの読者にはすぐに誰だかわかる程度に説明がされており、その彼が語り手であるためにいつもならなかなか見られない内面を知ることの出来る貴重な作品となっている。
話そのものは、泡坂妻夫氏の傑作短編「紳士の園」(「煙の殺意」に収録)を思わせるものだった。このタイプの話は真相が大きければ大きいほどいいので、なるほどそのために海外を舞台にしたのかとひとり納得してしまった。
ISBN4-06-182466-X ¥880+税
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