柴田よしき 徳間書店
柴田氏が最も得意としているものに、複数の登場人物を丹念に描写した群像劇がある。この作品は非常にページ数も多く分厚い本に仕上がっているが、中身の方もそれに劣らず濃厚だ。
中学生のある一時期に「同じ班」だった男女7人の物語(中心になって語られるのは5人)であるが、それぞれ全く違う道を歩んだかつての同級生達が、ある事件をきっかけに再び集まり、それぞれの近況を語りながらもう一度成長していく姿が深く描かれている。
久しぶりにあった同級生と、「この20年間何をしていたか」を一晩語り明かしたかのような満足感を得た。とにかく面白い。
ラストで明かされる事件の真相は、おそらくおおかたの読者が期待していたものとは違っていることと思うが、現実はむしろこういうことの方が多いのかも知れないと考えるとかえってリアリティがあるだろう。惜しむらくは、後半に登場する人物がもう少し前半でも語られていて欲しかった。
ISBN4-19-862079-2 ¥2000+税
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