受賞作が掲載されたら次に目指すのはデビューです。
多くの雑誌では、定期的に掲載されている連載やシリーズ読み切り以外に単発読み切りの枠があります。ここは、まだブレイクしていない若手漫画家にも掲載チャンスがあるところです。
雑誌の編集会議でここに載せる作品を決定するわけですが、超新人だったら練習を兼ねて完成原稿、普通の新人さんなら「ネーム」と呼ばれるラフを提出して競い合うことになります。
よく「ボツになった」という言い方をするのが、その編集会議で採用にならなかった場合です。ネームを作ってもこの時点でダメなら原稿にすることはあまりありません。担当さんとの話し合いで修正を加えればなんとかなりそうな場合は、改めて提出することもありますが、それはレアケースで普通は新しい話を考えることになります。
では、「ネーム」というのはどんなものなのか。
こういうものです。(なんか、わざとのように古くさいイントロになってしまいました・笑)人によってやり方は多少変わりますが、一般的にはコピー用紙などの紙(すごく小さい紙だったり原稿と同じB4くらいだったり様々です)に大体のコマ割りをしてセリフを入れ、誰が喋っているのかや場所がどこかなどわかる程度に絵を入れたもののことです。
別の紙にキャラクターなどの説明をしっかり描いたものを添えることもありますし、この中にしっかり描き込んでしまう人もいます。
たまに、「漫画って、絵とストーリー、どっちを先に書くんですか?」と聞かれることがありますが、一人で話作りと作画をしている人なら、「絵が先」ということは絶対にありません。(イメージを先に絵にしておいたりするのは別ですよ)
セリフが決まらないと、それに合わせた表情を描くことはできませんし、ストーリーが決まらないのにセリフを書き始めることもできないからです。
漫画を描くことに慣れないうちは、白紙を前にしてどうコマを割ればスムースに読めるのか、とか、セリフを読むリズムなどで悩んでしまうことがありますが、それはもう練習あるのみ。1ページの中にどの程度のセリフや情報が入るのかも、だんだん慣れてあまり考え込まなくてもできるようになってきます。
上のネームをもう一度見ていただけるとおわかりだと思いますが、これが作品の最初のページだとすると、まず1コマ目に校舎の絵があるので舞台が学校だと言うことがわかり、女の子が「おはようございます」と言っているので時間は朝で、その女の子が主人公らしいということが読者に伝わります。(制服のデザインによっては季節の説明も可能ですね)
真ん中の段のコマ(4コマ目)では、もう「新しい先生」の話題が始まっているので、新任教師のことが漫画のストーリーになっていることもわかりますよね?
5コマ目では、なぜこの話の中で新しい先生がくることになったのかを最低限の言葉で説明し、6コマ目では、主人公がすでにその先生らしい人とどこかで会っていて、その先生がどんな顔をしているのかも読者に見せることが出来ます。
漫画の1ページというのは、これだけの情報を詰め込むことが出来るんです。
このまま進めれば、2ページ目でその先生本人が登場することになるかもしれませんし、別の登場人物…例えば主人公のクラスメートがその先生の意外な情報を持って現れるかもしれません。
ここの展開で読者を引きつけられるかどうかが大体決まってくるんですよね。
こういう調子で規定ページ数全てをセリフと簡単な絵で埋めたものがネームです。
この段階でのコマ割りは暫定的なものなので、原稿に取りかかるときに改めて構図を考えたりセリフの位置を変えたりします。(慣れてくるとほぼネームのままでもできてしまうんですが)
映画の絵コンテにも似ていますよね。人によってはこれを「コンテ」と呼んで、「ネーム」はセリフのみのことを指す場合もあるようです。
話が前後してしまいますが、ネームにする前に脚本形式のものを作ったり綿密なプロットを文章にする人もいます。
そういうものを担当編集者に見せてから細部のアドバイスを受け、ネームに取りかかる場合もあるんですよね。
私は「プロット」は、自分だけの作業に留めてしまうので、ストーリーができた時点での打ち合わせは口頭です。
これは「ジュエリーBOXデイズ」12話を描くときに実際に作った私のメモです。丸数字はページの番号で、何ページでどんなシーンが入るかを書いてあるんですが、エピソードの順番も考えながら書いている段階なので矢印が縦横無尽に入っています。これを見ながらネームに起こすのでアイディアノートとプロットの中間くらいのものですが、全然分からないでしょう?(笑) 人に見せるものではないので自分さえわかればいいんですが、原稿を描き終わってしまった今となっては自分でもよくわかりません。(^^;;;;
というわけで、ネームを作るというのは、漫画の「絵以外」の全てと言っても過言ではないでしょう。
次の機会には作画の話を書いてみようと思っていますが、もしかしたらストーリー作りのことをお話しするかも。
まあ、誰に頼まれたわけでもないブログ記事ですし、漫画の仕事の具体的なことを書いてみようと思っただけですので、ゆる〜く読んでいただければと思います。
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