伊坂幸太郎 新潮文庫
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小説を楽しむためには、作者が提示した「この世界のルール」を受け入れる必要があると思う。それを大前提として余計な突っ込みはせず、ただ物語に浸ればいい。
ただ、ミステリの場合、ルールと見せかけたトリックだったり、前提そのものが崩れたりすることがよくあるので、ミステリファンは「どこが罠なのか」「どれが真実なのか」と意識しながら読む癖が付いてしまっている。
そういうわけで、提示されている世界観が果たしてトリックなのか、それとも単なる設定なのか、最後まで判断がつかないまま読み終えてしまった。…設定だったのね。
読後、漠然とカミュの「異邦人」を思い出した。ずいぶん若いときに読んだので(しかも何度も)記憶はおぼろだし、およそテーマを理解しているとは言い難い私だが、主人公がコンビニ強盗をする動機に近しいものを感じたのかも知れない。テーマへのアプローチは全く違うのだが。
作中に登場するリョコウバトの話は、やはり若いときに偶然出会った「50億のマーサ」(佐藤晴美・著)という漫画で知っていた。知っていて良かったと思う。
ISBN4-10-125021-9 ¥629+税
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