柴田よしき 祥伝社
著者自身があとがきで触れているように、「ホラー」というのはジャンルとしての定義付けが難しいようだ。
しかし、この本を読むとそんなジャンル分けや定義づけはナンセンスなのだということがわかる。「物語」として面白ければそれでいいのだ、と。
収録作は、書かれた年代も発表誌もバラバラで、しかも「お題」のあるアンソロジーや特集で発表された作品なので、本来ならまとまりのない印象の短編集になってしまう可能性もあるが、この一冊の本に流れる統一感はどうだろう。あとで著者自身が記した「覚書」を読むまで、発表誌がこんなに多岐にわたっていることに気づかないほどである。
僅かに途中、なぜこの展開になるのかな? と不思議に思った作品があったのだが、それこそ「覚書」を読んで納得できた。
その統一感を導き出しているのは、作品の合間に挟み込まれた不思議な人物達の会話なのだが、そこにも作者の仕掛けや細かい心遣いがあり、語り部としての柴田よしきの本領発揮というところか。
壮大な長編も、本書のような短編集もどちらも得意な作家というのはそれほど多くない。お勧めの短編集である。
ISBN4-396-63249-5 ¥1800+税
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